千葉県松戸市は12月22日、県内中学校の吹奏楽部が出場した大会結果と併せて顧問や部長へのインタビュー記事を公開した。

松戸市立小金中学校

“自分たちの奏でる音楽を聴いた人に感動を与える”をモットーに小金中学校吹奏楽部が4年ぶりの全日本で銀賞を獲得!

小金中学校吹奏楽部の皆さん 提供:大阪フォトサービス

音楽はスポーツのような勝負事ではない

顧問の須藤先生 提供:(株)フォトライフ

10月21日に愛知県名古屋市で開催された「第71回全日本吹奏楽コンクール」に、千葉県代表として松戸市立小金中学校吹奏楽部が4年ぶりに出場し、銀賞を獲得しました。顧問の須藤卓眞(すどうたくま)先生は、松戸市立和名ケ谷中学校、松戸市立第四中学校でも吹奏楽部の顧問を務め、全国大会へと導いた名伯楽です。そんな須藤先生が小金中学校に異動した2021年は、現在の3年生が入学した年でした。自身と一緒に小金中学校に入学した生徒たちが最後の年に全日本出場を果たしたことについて、須藤先生は「そこを目指していたわけではないので、『出られた』ぐらいの感覚なんです」と答えてくれました。この答えの背景には、須藤先生が指導者として抱くひとつの想いがあります。「全国大会出場や金賞を獲ることを目標にすることは悪いことではありません。しかし、それらを目標にしてしまうと、結果が出なかったときの生徒たちを思うと残酷でならない。音楽に、スポーツのような勝ち負けを求めてはいけませんから。自分たちが納得のいく演奏をすることが一番なので」。

須藤先生の想いは、生徒たちにも伝わっています。今年部長を務めた南屋美香(みなみやみか)(3年)さんは、「先生からいつも『いろんな人に聴いてもらって感動してもらう音楽を創ろう』 と言われていたので、そこを大事にやってきました。昨年は全日本に出場することができずみんなで涙を流しましたが、東関東大会で悔いのない演奏ができた時には、やってきてよかったねと話をしたことをすごく覚えています」と笑顔で答えてくれました。それでも、今年の全日本で金賞を獲れずに銀賞になったときは、生徒たちみんなが涙を流して悔しがったそうです。そんな生徒たちに須藤先生は、「自分たちの演奏が劣っているわけじゃない。たまたまこういう結果になっただけで、恥じることはない。全国にはここに出たくても出られない学校がたくさんある。その場所に自分たちは出られているのだから、それだけで素晴らしい」と言葉をかけたと教えてくれました。

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第四中学校

28人という少数精鋭で挑んだ第四中学校吹奏楽部が日本管楽合奏コンテストで文部科学大臣賞・最優秀グランプリ賞を受賞

第四中学校吹奏楽部の皆さん 提供:(株)フォトライフ

全国へ行きたいという強い想い

顧問の栢木先生 提供:(株)フォトライフ

2023年10月28日から11月5日まで東京都の文京シビックホールで開催された「第29回日本管楽合奏コンテスト全国大会」。松戸市立第四中学校の吹奏楽部は、中学校A部門で文部科学大臣賞・最優秀グランプリ賞を獲得しました。同校は昨年も同大会に出場し、中学校B部門で最優秀賞と審査員特別賞を受賞。小編成で出場した今大会でも見事グランプリに輝きました。この快挙の裏には、今年度の東関東吹奏楽コンクールで金賞を受賞しながらも、全日本への出場を逃したことで、部員たちがより「全国で演奏したい」という気持ちを高めていったことがあります。顧問の栢木幸宏(かやきゆきひろ)先生は、当時のことをこう振り返ります。
「かつて四中の吹奏楽部は100人近い部員数を誇っていました。しかし、現在は、コロナや拘束時間の長い部活動を敬遠する時流により部員が減少し、昨年は40人ほどいましたが、今年は28人となりました。そんな状況でも、生徒たちはひとつ上の先輩たちが出場した全日本吹奏楽コンクール出場への意欲を燃やし、練習に励んでいました。部員がA部門(主に人数の多い団体が出場する)で勝負したいという気持ちを見せてくれたので、挑戦してみようとなったんです」。栢木先生は「生徒自身に考えてもらうため、常に質問を投げかけるようにしている」と言います。また「道に迷った時は、辛い方、“茨の道”を選んでほしい」と伝えているそうです。
そんな“茨の道”を自ら選んだ部員たち。部長の羽生田千温(はにうだちはる)さんは、「昨年の全日本を経験していることもあり『全員で力を合わせて下級生の力を引き上げていけばできないことはない。やってみよう』と意見をまとめて挑むことにしました」と言います。
県大会を勝ち抜き迎えた東関東吹奏楽コンクール。今年の課題曲が難しく、1人が複数の楽器を担当するケースもある中、栢木先生は「いろいろと大変な部分は多くありましたが、生徒たちが頑張ってくれました」と話します。羽生田さんも、「自分自身の練習もしなければいけない中で、下級生の指導も不可欠になる。まずは自分が早くできるようになり、2年生、1年生を高いレベルに引っ張ってこなければいけないことがとても大変でした」と教えてくれました。

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第五中学校

第五中学校吹奏楽部が有言実行で新たな道を切り開く。東関東大会の壁を破り、創部後初の東日本学校吹奏楽大会に出場!

第五中学校吹奏楽部の皆さん 提供:(株)フォトライフ

代替わりの際に宣言した東日本出場!

部活指導員の芝﨑先生 提供:(株)フォトライフ

松戸市立第五中学校吹奏楽部は、これまで数回東関東吹奏楽コンクール(B部門)に出場するも、最上位大会である「東日本学校吹奏楽大会」での演奏にはたどり着けませんでした。昨年度も東関東大会で銀賞。当時3年生が5人だったこともあり、部員の多くは17人いる2年生。その悔しさを知る部長の伊藤彩瑛(いとうさえ)さんは、昨年の東関東終了直後に同級生たちとある話し合いをしたと言います。「とにかく銀賞という結果が悔しかった。その気持ちが残っているうちに、私たちの代での目標を決めたほうがいいと思って話し合いの場を持ったんです。そこで、ひとつ上の『金賞』という案も出ましたが、金賞を獲るだけじゃなく、東日本出場を目標にしようと決めました」。
部活指導員の芝﨑康和(しばざきやすたか)先生は「代替わりの際に目標を聞いたら、迷わず『東日本出場』と答えが返ってきて、音楽室にも『東日本出場』と書かれた紙が既に貼られていたんです(笑)。常に『先輩より一歩進んでもらいたい』という想いがあるので、私は金賞を目標にと思っていたのですが、熱意に負けた感じで、それならそこを目指そうとなりました」。芝﨑先生は、フリーの音楽家として活動する傍ら、市内外の学校で外部講師を務めてきた実績の持ち主。15年ほど前に友人が第五中学校で講師をしており、金管楽器の指導をしてくれないかと依頼され引き受けたことがきっかけで、現在も第五中学校で指導を続けているそうです。また、昨年は、当時の顧問が産休に入ったことから、特別に指揮(中学校のコンクールでは、外部講師が指揮を務めることを認められていない)をすることに。
今年は、松戸市の部活指導員という立場になり、指導時間が増えたことで部員たちとも綿密な練習ができたそうです。「五中以外の学校でも指導してきた経験があるので、東日本出場を目指す学校がどれだけきつい練習をしているかを知っている私としては、難しいのではと考えていました。時には涙を流しながら練習するケースがあるほど、本当に厳しい環境に身を置かなければ出場できない大会です。私としては、可能な限り楽しく演奏してもらいたいという想いがありましたが、部員たちの熱意が伝わってきたので、ある程度厳しくしても耐える覚悟はあるんだと思ったんです」。

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