楽器を練習・演奏することは、精神をコントロールしたり脳を活性化するなど、私たちに多くの恩恵を与えてくれます。楽器を始めるのに尻込みをしている方、子供に楽器を習わせようか迷っている方は必読です。

脳が活性化!賢くなる

楽器演奏を続けることで、科学的・数学的思考を発達させることができます。楽器を演奏する時、私たちは脳のあらゆる部分を使っているので、習慣的に楽器演奏をすることで脳が活性化してゆきます。
運動やウェイトトレーニングによって、身体が鍛えられたり、しなやかになるのと同じように、脳は音楽を演奏することによって、パフォーマンスが向上します。

物理学者のアインシュタインは生前、「音楽を演奏しない人生なんて考えられない。…人生の喜びのほとんどは音楽から得ている。」と明言しました。彼は幼少よりピアノとヴァイオリンを練習しており、13歳でモーツァルトのヴァイオリンソナタに出逢います。それ以来生涯モーツァルトとバッハの音楽を演奏し続けました。モーツァルトやバッハの音楽は、明快でシンプル、構造的に完璧といった共通点があり、それはアインシュタインの理論に通じると言われています。

記憶力が上がる

私たちが生活の中で使っている脳は全体の10%程度です。
音楽を演奏することで、普段の生活で使わない脳の領域を刺激し、その結果、長期記憶が可能になり、さらに子供の頃から音楽を始めることで脳の発達を促す作用もあります。
認知症、アルツハイマー、脳梗塞等の疾患を持った患者が楽器演奏をすると回復が早まるといった調査結果もるようです。

「認知症や認知障害予防としての楽器演奏」Playing a Musical Instrument as a Protective Factor against Dementia and Cognitive Impairment: A Population-Based Twin Study

感情をコントロールできるようになり、集中力が上がる

アメリカのロバートラーナー医科大学の研究で、楽器演奏をすることで子供は感情のコントロールができるようになり、不安感を減らし、集中力を高められることがわかりました。

楽器の練習や演奏は「ながら」ではできません。意識や体の全てを演奏に向けます。楽譜を読む、指を動かす、音を聞く、呼吸をコントロールする…など様々な動きを同時にすることで、脳の動作神経や大脳皮質の厚さに変化が起こり、感情や行動のコントロール、集中する力が発達します。それゆえに、集中力がないお子さんがものごとに集中できるようになると言われています。

「楽器演奏することが子供の脳を助ける」Playing Musical Instruments Can Help Kids’ Brains

仲間ができ、孤独感がなくなる

孤独感は鬱病や気分障害の要因の一つです。楽器を始めると、バンドの仲間、音楽教室の仲間など、人間関係が広がります。一緒に同じ作品を作り上げていく過程で親密なコミュニケーションが増え、孤独感を感じにくくなります。

イギリス、キール大学の音楽心理学専門のアレクサンドラ・ラマウント教員によると、音楽活動をすることは、共感能力のような社会的スキルに効果があります。そして音楽に関わっている子供は、自分や他人のことを理解し社会的なつながりを発達させます。

ストレス解消

メンタルヘルスには、日頃からのストレス解消は欠かせません。ストレスが蓄積されると身体や精神の不調や病気につながることは広く知られています。

音楽を演奏するという行為は、「マインドフルネス」の実践になります。マインドフルネスとは、今この瞬間に意識を向ける生き方です。私たちは普段、過去の失敗を後悔したり、未来のことを考えすぎて不安になったり、脳を無意識に稼働させています。瞑想をしたり楽器演奏をすることで、マインドフルネスを日常生活で実践することができます。素晴らしい演奏をするために自分のエネルギーを注ぎ、集中し、ネガティブな思考回路は消えてゆきます。
さらに、感情を音に込めて外に出すという行為は、普段心の中に溜め込んでしまっている感情や鬱屈とした気持ちを吐き出す手段になり、大きなストレス解消となります。

「楽器を演奏してストレスを解消」Play an Instrument, Relieve Stress

「マインドフルネス瞑想を通したストレス緩和」StressReduction Through Mindfulness Meditation

リラックス効果

音楽が心を落ち着かせるのに効果的であることはよく知られていますし、音を奏でることでリラックスできることは明白です。
また、管楽器を演奏したり歌を歌う場合、自然と腹式呼吸になり呼吸が深くなります。深く呼吸することは、ヨガや瞑想をはじめとする、精神の安らぎを得るための方法でもあります。楽器演奏や歌は、深い呼吸を意識せずに行うので、楽しみながら、気持ちをリラックスさせることができるのです。
さらに、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」は、一定のリズムの動きを繰り返すことで強化されるという性質があります。(「セロトニンの増加が心身に及ぼす効果」
ジョギングのように同じリズムを刻む運動も精神安定につながるということがわかっているため、ビジネスパーソンでもランナーが増えています。音楽演奏をする上で、ビートを意識することは不可欠なので、自然と精神が安定します。その結果、ストレス、鬱、不眠を解消します。

達成感を感じる

好きな曲や難しい曲が演奏できるようになったり、なかなか掴めなかったリズムがわかるようになったりと、楽器演奏は挑戦と達成の連続です。「プロ」と呼ばれる熟練した演奏者でも、日々自分を高めていくことに終わりはありません。目標を設定し、その域に達するために毎日鍛錬することで、どこまでも自分を高めていける世界、それが音楽です。

自己肯定感が上がる

前項目で書いた通り、楽器演奏を始めると大小さまざまな達成を経験することになります。「できなかった曲ができるようになった」「先生に褒められた」「演奏会が大成功した」「コンサートでソロを任せられた」…コンスタントに達成感を経験するようになると、自己肯定感が高まります。

楽団などグループに所属している場合は、仲間に必要とされている感覚、自分の重要感を感じられ、自信がついてゆきます。
テキサス大学オースティン校の調査で、恵まれない家庭環境の子供たちにピアノと3年間の音楽レッスンを提供しました。その結果、子供たちの幸福感と自尊心が高まると結論づけられました。

「音楽のレッスンは子供の自尊心を高める」Music Lessons Boost Children’s Self-Esteem

タイムマネージメント、習慣化がうまくなる

言うまでもなく、楽器の上達には練習が欠かせません。毎日の忙しいスケジュールの合間に練習時間を作り練習スケジュールに従うことによって、生活の中の無駄な時間を減らし、時間を効率的に使えるようになります。
目標達成のためには「習慣化」が効果的です。行動心理学の法則の1つに「インキュベートの法則」があります。これは、21日間連続である特定の行動を続けると、それが習慣となり「努力感」「苦痛感」を感じることなくやり通すことができるというものです。
楽器練習を通してこの法則を経験することで、他の分野でも「目標達成のための習慣化」が身につきます。

クリエイティブになれる

音楽を演奏することで、私たちは新しいアイディアを思いつきやすくなると言われています。演奏することはほどよく私たちの「いつもの考え方」を妨害してくれ、固定概念がつまった顕在意識を休ませてあげる効果があります。
また、手や指を動かすことで、脳内の神経細胞間で新しいつながりが生まれます。その結果様々な点において創造性、ひらめきがアップします。

マイクロソフト社の共同創始者であるポール・アレンはニューヨークタイムズ誌で「楽器演奏をすることで現存するものを超えた見方ができ、新しい方法で自分を表現できるようになる」と話しています。

気持ちが明るくなる

学生時代のイベントでわくわくしたあの気持ち、大人になったらなかなか味わえないと思っていませんか?
音楽を始めると、コンサートに向けてのリハーサル、演出を考えたり衣装を計画したり…程よい緊張感と楽しみな気持ちで、心地よい興奮を味わうことができます。ステージでお客さんから見られることになるので外見に気をつけるようになり、表情も気持ちも明るくなります。

まとめ

楽器演奏がメンタル面で役に立つことは心理学、脳科学、医学的にも証明されています。気持ちをコントロールし、自分や他人を尊重する音楽は、自己実現の第一歩になります。人間に与えられた特権である音楽演奏。思う存分楽しんで、メンタルも健康に保ちましょう。