大切なピアノを長く愛用するには、定期的なメンテナンスとしての調律が欠かせません。

ピアノは主に木やフェルト・革・金属でできており、摩耗や経年劣化、湿気の影響を受けて状態が変化する楽器です。なおかつ、その変化は必ずしも演奏に好ましいとは限りません。だからこそ、いわば健康診断ともいえる調律が必要なのです。

そこで、本記事ではプロの調律師が、ピアノ調律の必要性や頻度、手順、依頼料金などを解説します。

案内人

  • おばたおりえピアノ調律師。大阪府出身。
    大学卒業後、専門学校にて調律・修理・整調・塗装・オーバーホールを学ぶ。
    卒業後、ピアノ調律会社にて工房勤務経験を経て現在フリーの調律師として活動中。

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ピアノの調律とは?


調律とは、いわゆるチューニングのこと。ただし実際の作業では、音色はもちろん内部構造や部品に至るまで、ピアノ全体の調子を整えるのが普通です。

調律を行う調律師の作業には「調律」「整調」「整音」「修理」の4つが含まれます。これらについて、以下で詳しく説明します。

調律

調律とは、鍵盤ごとの音の高低関係(=音律)を正す作業、いわゆるチューニングのこと。

ピアノの弦は、日々の演奏や温度・湿度などの変化で伸縮し、少しずつ音程に狂いを生じさせます。なので、定期的に調律をする必要があるわけです。

調律ではチューニングハンマーと呼ばれる専用の工具を用い、弦の張られているチューニングピンを回して、弦の張力を変えるという工程を行います。

整調

整調とは、内部部品が正常に動き続けるようにする作業のこと。

これが上手くいっていないと、タッチ感やペダルの踏み心地といった演奏感が損なわれるだけでなく、音が出ないなど演奏そのものに支障をきたします。作業の際には、不調箇所がないか、あればどのような調整が必要かを判断し、部品の修正を行います。

整音

聴覚上の聞こえ方=音色を整える作業が整音です。

ピアノの音は、内部の弦をハンマーという羊毛でできた部品で叩くことで鳴らしています。このハンマーの硬さや形を調整することによって、音色を整えます。。

なおハンマーの調整には、一般的に調律代金とは別の費用がかかります。

修理

フェルトの摩耗や弦の断線など、部品の破損を直すのが修理です。ピアノには消耗部品が含まれており、長く使えば経年劣化などによって必ず修理が必要になります。

また、修理が必要な場合、基本的に別途料金が発生します。

ピアノ調律の必要性


調律をせずに放置すると、音程の狂いや部品の不具合が起こります。

よくあるのは、タッチに違和感を感じる、鍵盤が戻らない、音の止まりが悪い、連打すると音が鳴らない時があるなど。このような状態で演奏し続けても気持ちよくありませんし、何より上達の妨げになってしまいます。

修理の必要な箇所を放置すると、別の部品に不具合が出ることもあるため、やはり定期的な調律がおすすめです。

ピアノ調律はどのくらいの頻度でやるべき?

一般家庭であれば、調律の頻度は1年に1回が平均的です。

しかし、演奏状況やピアノの状態によっては、より高頻度で行わなければなりません。長時間演奏するほど弦の張力の緩みは大きくなり、音程が狂いやすくなるためです。よって、日常的に練習する方やピアノの先生は、数ヶ月〜半年に1回の調律をおすすめします

また、ピアノの状態によっても調律頻度は変わります。買ったばかりの新しいピアノの場合、弦の張力が安定するまで音程が狂いやすいので、数年間は半年に1回の調律がおすすめ。

ピアノの設置場所が温度や湿度の影響を受けやすい場合、音程の狂いや部品の痛みが通常より早いため、1年より短いスパンでの調律を要することもあります。

上記の期間でなくとも、特定の季節に不具合が生じたり、タッチが重く感じるようになった、音程の狂いが気になったということがあれば、そのタイミングでの調律を依頼すべきです。

ピアノ調律は自分でやっても良い?

「ギターやバイオリンなんかは自分でチューニングするんだし、ピアノも自分で調律できないのかな」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論からいうと、ピアノの調律を自分で行うのはまず不可能です。

というのも、ピアノとギター・バイオリンでは、チューニングの方法がまったく異なるからです。

ギターやバイオリンなら、チューナーを使えば比較的簡単にチューニングができます。一方、ピアノだとそうもいきません。ピアノ調律では音叉を用いて基準音を作り、それを元に調律師の耳ですべての音を作っていきます。もちろん、これには専門的な知識と熟練の技術が必要です。

加えて、内部のパーツや構造の観点からも、自分での調律は厳しいでしょう。ハンマーや弦の摩耗具合を調べたり、鍵盤の重さの調整を最適化したりできるかというと、生半可なノウハウでは不可能です。

このように、自前の調律は大切なピアノを故障させてしまうだけでなく、大きな事故につながるリスクを上げてしまいます。ピアノ調律は調律師に依頼してください。

ピアノ調律の仕方・手順

依頼するとはいっても、具体的に何をどう行うのかは気になりますよね。以下に一例として、筆者の手順を紹介します。ピアノの状態によって作業の順番は異なります。

状態チェック


はじめにピアノ全体の状態をチェックします。

すべての音が正常に鳴るか、雑音が混じっていないか、動きの悪い部品はないか、パーツに破損はないか…などを入念に確認した後、今のピアノの状態についてお客様へ説明します。

調律


問題なく音が鳴る場合は、まず調律を行います。

作業中には、音と音がぶつかった時に発生する「唸り(不協和音を鳴らすとワンワンワンワンと鳴る音)」や倍音を聴いて合わせていきます。

具体的には、まず音叉で基準となる音を取り、その音を起点に1オクターブの12音を割り振ります。今度はそれを基準にオクターブ下、オクターブ上を調整します。弦のほとんどは1つの音に対して2〜3本張られているため、それらの弦同士がぴったりと同じ音になるよう合わせます。

整調


調律が終わったら、各部品の動き方の調整を行います。

演奏しているうちにクロスやフェルトが摩耗して隙間ができたり、湿気の影響を受けて木材が膨張・収縮したりして、部品の動き方にズレが生じます。ですので、鍵盤の高さや沈み方、部品の位置などをわずかに変えて、演奏感や音の出方がより良くなるよう整えます。

整音


弦を叩くハンマーは羊毛でできており、弦を叩き続けるとどんどん硬化し、音色も同様に硬く変化していきます。これを最適化する整音の作業では、ハンマーに針を刺して硬さを調整したり、やすりで削って形を整えたりして音色を整えます。

修理


経年劣化や破損などのある部品を、お客様の了承を得た上で修理します。

修理の内容にもよりますが、部品だけを工房に預けて補修後にお届け・調整になるパターンがほとんどです。

最終チェック


最後に、調律や整調に崩れがないか入念に確認し、各部品のネジを増締めします。そして、作業の説明や今後のメンテナンスについてお客様に説明し、作業完了です。

ピアノ調律依頼の料金相場

調律料金の相場は、アップライトピアノで12,000円〜15,000円程度グランドピアノで15,000円~20,000円程度です。
※上記費用にさらに消費税が加算されます。

ただし、前回の調律から年数が空いている場合は、通常の調律では音が安定せず手間がかかるため、追加料金が発生することもあります。また、遠方の調律師に依頼する際には出張料金がかかるケースも。

いずれにせよ、費用に関してはあらかじめ依頼先に確認しておきましょう。

ピアノの調律師の探し方

ピアノ調律の必要性を感じ、いざ調律を頼もうと思ったときに悩むのが、調律師の選び方。「どこに依頼すればいいかよくわからない」という方も多いでしょう。

調律師を探す際の方法としては主に以下の3つがあります。

  1. インターネットで地域の調律事務所や楽器店を探す
  2. ピアノを購入した楽器店に依頼する
  3. ピアノの先生や知人に紹介して貰う

ネット検索の場合は、過去の請負実績や口コミをチェックできる場合もあるので、調律師選びの参考にもなります。

ピアノを販売している楽器店であればほとんどが調律依頼を受けつけているので、購入した楽器店に依頼するのも一つの方法です。

また、信頼できる知人やピアノの先生からの紹介も良いでしょう。身近な人の口コミを参考にできるため安心感があります。

調律師を探すときの注意点

調律師を探す場合の注意点は、必ず調律料金について事前に説明のある調律師に依頼することです。納得した上で依頼できる調律師を選びましょう。

また、修理や追加料金の必要な調整が必要な場合も、必ず必要性をわかりやすく説明し、こちらの予算を考慮して提案してくれる調律師に依頼することをおすすめします。

ピアノの調律師を探すのにおすすめのサイト

©ヤマハピアノサービス株式会社

お手持ちのピアノがヤマハであれば、「ヤマハピアノサービス」の利用がおすすめです。

ヤマハピアノサービスとは?

©ヤマハピアノサービス株式会社

ヤマハピアノサービスは、長年音楽に携わってきたヤマハの100%子会社が運営するピアノ専門業者です。調律は経験豊富なヤマハ認定の調律技術者が担当しているので、初めて調律を依頼する方でも安心して任せることができます。

また、自社大型工房でヤマハ認定の高品質中古ピアノ『ヤマハリニューアルピアノ』の再生・修理も行なっているため、そこで培った技術やノウハウを生かした高クオリティなサービスを提供してくれるのも特徴です。

©ヤマハピアノサービス株式会社

とくに好評なのがクリーニング(ヤマハリニューアルプラン)。お手持ちのピアノが『ヤマハリニューアルピアノ』と同等の美しい仕上がりに生まれ変わるサービスです。

その他にも、オーバーホール、消音ユニットの取付など、ピアノに関するアフターサポートをトータルで相談できるのもおすすめポイントです。

調律料金や依頼方法は?

©ヤマハピアノサービス株式会社

依頼はWebフォーム又は電話で受け付けています。

調律料金は以下の通りです。前回の調律からの空き年数やピッチの低下度により追加料金が発生する場合があります。対応エリアは首都圏、中京圏、関西圏(京阪神)です。
※その他のエリアについては、ヤマハ特約店にお尋ねください。

ヤマハアップライトピアノ

¥16,500(税込)

ヤマハグランドピアノ

¥20,350(税込)

【公式】ヤマハピアノサービス

まとめ

今回はピアノ調律について、どういった作業であるのかという点や必要性、作業の流れ、料金などを解説しました。

きちんと手入れすれば、ピアノは長く演奏し続けられる楽器です。大切なピアノの寿命を長く保つために、ぜひ定期的に調律をしてあげてくださいね。