仙台駅から地下鉄東西線で二駅、大町西公園駅ほど近く。
セント・バーナードのロゴの看板が目印の「珈琲豆屋ベートーベン」。
1983年創業、今年で39年を迎える老舗のベートーベンさんは、全国的にも珍しい「作曲家」の名前を冠した珈琲や、クラシック音楽の曲名がつく珈琲の販売をされています。
そこで今回は、どうして珈琲のネーミングに作曲家やクラシック音楽のタイトルをつけたのかお店に伺いインタビューしてきました。
お客様のことを第一に考える、優しくもこだわりの強いオーナーと奥様の想いをぜひ感じていただけたらと思います。
案内人
- ERI音楽と珈琲、ミッフィーが大好きなフリーライター。
専門紙執筆をはじめ、取材・インタビューを中心に活動中。
目次
あのベートーベン⁉仙台のこだわり珈琲豆屋に潜入取材
珈琲好きを虜にする「珈琲豆屋ベートーベン」。
お店に近づくにつれ珈琲のいい香り…ドアを開けると、ディスプレイされた各国の厳選された珈琲豆が目に飛びこんできます。
店内のあちらこちらにはセントバーナードのぬいぐるみや置物も。歴代看板犬のお写真も飾られ、あたたかな雰囲気。お土産・贈答にもピッタリの種類豊富なドリップコーヒーや可愛いクッキーなども販売されています。
仙台は単身赴任や大学進学で住み始める方も多いのですが、異動や卒業などでこの地を離れてからもお店から豆を取り寄せる方も多いとのこと。創業から39年を迎えるベートーベンさんは、地元の常連客はもちろん、全国の珈琲好きに愛され続けている珈琲豆屋さんなのです。
仙台駅や三越、時には県外にも出店!
ベートーベンさんは、お店だけでなく仙台駅や仙台三越などでも定期的に販売されています。
県外に出られることもあるんだとか。例えば名古屋では武将隊の発祥地ということもあって、伊達武将隊が好きで購入されることもしばしば。このほか、各地で出会ったお客様がその後ネットなどで購入してくださることもあるそうです。
「他の土地の空気に触れるのはいいことだと思う。色んなことが学べるしありがたい」とオーナーはお話されていました。
仙台市内で行われる音楽イベント時の販売
毎年秋に行われる、仙台クラシックフェスティバル(愛称:せんくら)では「七人の作曲家」ドリップコーヒーを販売。
コンクールの課題曲にもなり、一般的に顔を見てわかる作曲家7人が厳選されたそう。
ベートーヴェン、モーツァルト、シューベルト、ブラームス、バッハ、ショパン、チャイコフスキー・・・袋の後ろにはそれぞれの出生~没年、作曲家とコーヒーの関わりや味のイメージを記載。表のデザイン画・監修は元々交流のあった上田弘子さんが手がけられています。
珈琲豆が持つ味と作曲家の雰囲気で作られたという作曲家それぞれの珈琲。袋を手にした時から、作曲家と珈琲のコラボレーションを丸ごと楽しめるのも素敵ですね。
ちなみに、七人の作曲家ドリップコーヒーは3年に1度、5~6月に開催の仙台国際音楽コンクールでも販売。こちらでは他に、スタッフさんからの熱望により実現した仙台国際音楽コンクール×ベートーベンさんコラボのオリジナルデザインのドリップコーヒーも登場します。
では一体どのようにして音楽家の名前を冠したドリップコーヒーが生まれたのでしょう?気になる誕生秘話についてオーナーと奥様にお話を聞いてみました。
インタビュー①|音楽家の名前がつく珈琲のネーミングと珈琲豆の関係について
ー音楽家の名前や曲名を珈琲豆やブレンド名につけたきっかけを教えてください。
<奥様>
店名が「ベートーベン」ということもあり、自然と「ベートーベン(ベートーヴェン)を活かしたい」気持ちと、ただ珈琲を飲んでいただくだけでなくイメージを膨らませてもらいながら飲んでいただきたい…そんな感じです。
例えば音楽のタイトルをつけることによって、その曲のイメージに合うようなブレンドを私たちが作り、音楽を聞きながらひと時を過ごしてもらいたい…そんなことを思っています。また、季節ごとにその季節にあったブレンドをおつくりすることで季節感を味わってもらいたい想いもあります。
単に「キリマンジャロです」「ブラジルです」という、珈琲そのものを飲むだけじゃなく「その時間」を「ひと時」を、色んなお客様がお持ちになってる曲のイメージで楽しんでいただきたいな、がきっかけといえばきっかけですね。
ー珈琲豆に作曲家の名前がついているのは珍しいのでは?
<奥様>
珈琲が本当に好きで、喫茶店をされている方などはご自身が飲んで欲しいものを提供すれば良いと思うんです。でも、ベートーベンの場合は珈琲だけではなく「飲む時間・味わう時間」を楽しんでいただきたいので作曲家の名前を付けました。クラシックがお好きな方などに楽しんでいただけたら嬉しいと思っています。
ー最初から珈琲豆屋さんをやろうと思っていましたか?
<奥様>
その辺はあいまいで難しいけれど、なりゆき…これがきっかけです!というものは残念ながらないんですよね。
<オーナー>
難しい話になってしまいますが、珈琲豆の販売っていうのは珈琲が好きでどうしようもないのめりこんだ状態じゃできない。豆と客観的に向き合いながら、その豆の良さをお客様に伝えるっていうのが豆屋の仕事なんですよね。
自家焙煎の喫茶店さんのような、既に(珈琲を淹れた状態)の液体を提供するところは美味しく飲める液体に向けた焙煎の仕方になっていく。
でも「豆屋」は少し違う。のめりこまないで、一歩も二歩も引きながらその珈琲豆がどういうものなのかと向き合いながら焙煎して、お客様にその珈琲の良さを提供していくのが豆屋の仕事だと思っています。
だから「豆屋」うちはあくまで「珈琲豆屋」なんです。
店を始める前からセントバーナードの「ベートーベン」を飼っていたのも、ベースにはありますね。「店をやろうか」ということになった時、セントバーナードをロゴにしてベートーベンという店名にしました。「ベートーベン」を知らない人はいないですしね。
https://youtu.be/ki8wHMR-yOI
インタビュー②|こだわりの珈琲について
ー今月のブレンドや期間限定ブレンドは毎年同じブレンドですか?
<奥様>
楽しみにして下さっているお客様もいらっしゃるので、できるだけ変えないようにしています。たまに猛暑だとか、あまりに長雨だったりするとその年の気候に合わせて多少変えることはあるんですけどね。
ーお持ち帰りの珈琲は毎日違いますよね?
<奥様>
昔は「この国の珈琲を飲んでください」のように提供していましたが、飲んで欲しい珈琲…今の言葉でいう推しを知っていただくために変えています。
<オーナー>
基本的にお客様に提供させていただく豆は良くて当たり前であって、その上に色んなことを想像したり想いを作っていただいたりそういうことが出来れば自分たちとしては幸せだと思っています。
良くて当たり前。その中でお客さまに何を提供できるか…そこが重要なんです。
「今月のブレンド」や「期間限定のブレンド」「日替わりの珈琲」を提供した中で、それらを飲んで、お客さんがどういう想いを描けるか?ということを大切にしています。
ー表にある看板のブレンド紹介メッセージが素敵で大好きなんですが、どなたが書かれていますか?
<奥様>
ありがとうございます。季節のイメージやブレンドの曲名のイメージから私が書いています。
こだわりその①【スペシャリティコーヒー】
ベートーベンさんで扱われている珈琲豆はすべてが「Speciality Coffee(*スペシャリティコーヒー)です。
基本的に午前中、店内で焙煎。
かかる時間はその時の量などによって違い、例えば5㎏なら冷え切るまで30分ほどかかるそうです。
*原料となる生豆は各生産国共、銘柄や産地・農園、精製方法を指定した最上質の品を使用。
豆の種類、産地の収穫時期、生産年度によって、含水量など生豆の状態が異なるため、状態に合わせそれぞれの個性を大切にじっくりとやきあげます。
焙煎方法には生豆に直接火を当てて焙く、直火式と呼ばれるものを採用。
人の目と長年の勘で、やきあげのタイミングを見計らいます。
それから、電子選別機で欠点豆をはじき、その後さらにハンドピック(手で選別)で仕上げます。生産国でも生豆の選別は行われるものの、どんなに素材が上質でもコーヒーの生豆には味を損なう欠点豆(死豆・発酵豆等)が必ず含まれています。欠点豆の有無で、味のクリアーさは確実に違います。
味と香りがダイレクトに表現されるため、大手メーカーさんの豆を使われる
場合よりも、まずは多少控えめの量でお淹れになってみて、あなたのお好みの味をお確かめ下さい。
(ベートーベンHPから抜粋・引用)
こだわりその②【香りと鮮度】
「コーヒー豆は生鮮食品」と断言するベートーベンさんでは、常に「挽きたて」にこだわっています。その熱い想いをHPより引用してご紹介します。
コーヒー豆は生鮮食品です。焙煎してから日数がたつと香りと鮮度が失われ、酸化していきます。ベートーベンでは、焙きたての新鮮な豆をお届けいたします。また、まとめてお求めいただく場合や遠方のお客様には、エージレス(脱酸素剤)を同封の上、真空包装にいたします。(焙煎したてのため、脱酸素剤を封入しないとコーヒーから発散するガスで袋がふくれてしまうからです)。
また、百貨店などではバルブ包装で販売いたします。
開封前の賞味期間は、真空・バルブ、いずれも約1年です。
(ベートーベンHPより引用)
こだわりその③【オーナーの妥協なき本物志向】
もともとの原点、珈琲はフルーツであると語るオーナー。ここからはちょっとマニアックな珈琲豆知識をご紹介します。
『珈琲とはそもそもどういったものなのか』について教えてくれたオーナーのお話を、鮮度そのままにお届けします。
<オーナー>
珈琲の基本的な考え方で、良質な豆には酸味があるんですよ。
珈琲をはじめ、農産物は何でもそうですが厳密にいえばマイクロクライメイト…気候風土で味は全部変わります。
私たちの言う「酸味」は珈琲のフルーツのような良質な酸味で、専門用語では「アシディティ」というもの。口に入った瞬間に、フルーツの酸味「オレンジ的だよね」
「ベリー系の感じだよね」というような酸味を指しています。
インタビュー③|クラシック音楽への想いについて
ー最後にクラシックはお好きですか?
<奥様>
好きですよ。娘が2人いるんですが、音楽関係の学校へ進み音楽関係の仕事に就いたんです。ピアノの課題をもらえばCDを買って…で、一緒に演奏家の名前を覚えたりしました。演奏家ではグールドなどが好きですね。作曲家としてはもちろんベートーヴェンも好きですよ。ピアノコンチェルト・ヴァイオリンコンチェルトなどが好きですね。
インタビューを終えて
クラシック音楽×珈琲。クラシックがお好きな方はもちろん、作曲家の名前や曲名からイメージをふくらませ「珈琲を飲む時間・味わう時間」を楽しんでいただきたいという、べートーベンさん。決して押し付けることのない、そっと寄り添うような優しさがありました。
仙台にお越しの際はぜひお店で直接、美味しさと想いを味わっていただきたいなと思います。催事で偶然出会えたら、それも嬉しいですよね。このほか、ベートーベンさんのホームページや販売サイトでも購入できますのでぜひチェックしてみてください。想いのこめられた美味しい珈琲をあなたにも。