電子ピアノを選ぶ際に重要なポイントとなってくるのが鍵盤数です。鍵盤数は、演奏の幅や表現力に大きく影響するだけではなく、設置スペース問題にも直結するため、奏者の目的やニーズに合わせたものを選ばなければなりません。

しかし、「種類が多くて一体どれを選んだらいいのかわからない……」という方も多いでしょう。

そこで今回は、88鍵電子ピアノの他に、人気の61鍵、76鍵キーボードの特徴を比較し、それぞれのおすすめモデルを現役ピアノ講師がご紹介します!リビングに置ける省スペースモデルから、グランドピアノのタッチを再現した高級モデルまで、幅広くピックアップしました。

それぞれの鍵盤数の弾ける曲と弾けない曲も解説しているので、電子ピアノ選びで迷っている方は自身の求める演奏レベルとすり合わせながら参考にしてみてくださいね。

案内人

  • 古橋あかり4歳よりピアノを始める。 東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。同大学院修了。及川音楽事務所所属。いばらき文化振興財団登録アーティスト。現在は、演奏活動と並行して、ピアノ講師としても活動している。

    詳しくはこちら

本物のタッチに近いおすすめ電子ピアノ10選

あなたにはこれがおすすめ!鍵盤数の種類と選び方

あなたにはこれがおすすめ!鍵盤数の種類と選び方

鍵盤数の数え方はシンプルで、「白い鍵盤と黒い鍵盤、すべてを合わせた数」が鍵盤の数です。通常、電子ピアノの鍵盤数はアコースティックピアノと同様の88鍵ですが、76鍵や61鍵で作られたキーボードモデルと併せて検討する方が少なくありません。理由は、設置スペース問題や費用、持ち運び頻度などさまざまです。

いずれにせよ、鍵盤数によって弾ける曲や弾き心地、持ち運びのしやすさが変わってくるので、自身の利用シーンや目的に合わせて適切なものを選ぶ必要があります

ピアノのレッスンに通っている方や、アコースティックピアノのようなタッチ感や本格的な演奏を楽しみたいなら88鍵の電子ピアノがおすすめです。持ち運びが多かったり、レッスンに通うほどではないという方は、76鍵や61鍵のキーボードという選択肢もあります。

他には49鍵などもありますが、使いどころが限られるため、今回は人気の88鍵、76鍵、61鍵の3種類の鍵盤数モデルを比較していきます。

88鍵盤|本格的なピアノ演奏を楽しみたい人におすすめ!

88鍵盤|本格的なピアノ演奏を楽しみたい人におすすめ!

ピアノ教室に通っていたり、本格的なクラシックやジャズを演奏したりする場合は、88鍵でないと弾けない曲が多いため、電子ピアノを選ぶのがおすすめです。

とくに、ピアノ教室に通っている子どもの場合、鍵盤数が少ないキーボードで練習していると、アコースティックピアノの音の高さと鍵盤の位置が一致しづらくなり、楽譜を読むことへの苦手意識につながる傾向があります。筆者のピアノ教室では、お子様の成長に伴い88鍵の電子ピアノを購入する保護者様が多いので、最初から88鍵を選ぶことをおすすめしています。

76鍵盤|ピアノ曲が弾けて持ち運びもできる楽器を探している人におすすめ!

76鍵盤|ピアノ曲が弾けて持ち運びもできる楽器を探している人におすすめ!

「電子ピアノはちょっとハードルが高い……」という方や、レッスンには通う予定はないという方には、よりコンパクトな76鍵のキーボードをおすすめします。

クラシックやポップスでも、簡単なアレンジVer.のものはそこまで広い音域を使うことはありません。実際に88鍵のピアノでも最高音や最低音を使うことはほぼないので、目標の曲の音域がそこまで広くなければ、76鍵のキーボードでも十分です。

重量はありますが、持ち運びも可能になってくるので、自宅以外でも演奏するシーンが多い方は76鍵を選ぶといいでしょう。

61鍵盤|ピアノ初心者やバンド活動で使いたい人におすすめ!

61鍵盤|ピアノ初心者やバンド活動で使いたい人におすすめ!

61鍵のサイズになってくると、かなり持ち運びが楽になってきます。より軽量化に特化したモデルもありますので、バンド活動で頻繁に持ち運びたいという方におすすめです。

また、ピアノ初心者や、趣味でピアノを始めようか悩んでいる方のお試し用としてもいいでしょう。しかし、その場合は電子ピアノを購入するまでのつなぎの期間という位置づけになることが多いので、最初から買い替えも視野に入れておく必要があります。

鍵盤数別おすすめの電子ピアノ・キーボード

ここからは、88鍵、76鍵、61鍵それぞれのおすすめモデルをご紹介します!

88鍵盤のおすすめ電子ピアノ

CASIO / GP-310BK

GP-310BKは、計算機や時計で有名なCASIO社が開発した88鍵電子ピアノです。グランドピアノの機構を徹底的に追求したモデルで、ダンパーペダル・ソフトペダル・ソステヌートペダルの3つを備えています。

そのため、よりアコースティック・ピアノに近い感触で演奏したい方におすすめ。どんどん上達して曲のレベルが上がっても、十分に練習楽器としての役割を果たしてくれます。

YAMAHA / ARIUS(アリウス)スリムシリーズ

あまり大きなものは買えないけど音色にはこだわりたい!という方におすすめなのがヤマハのARIUSスリムシリーズです。ヤマハコンサートグランドピアノ「CFX」の音色を搭載し、本格的な音とタッチ感で、表現豊かな演奏を実現しています。

「CFX」は、2021年のショパンコンクールでも公式メーカーとして使用され、一次予選ではスタインウェイに次いで多く使用されました。

Casio / PX-S5000BK

PX-S5000は、CASIO社が開発した卓上の88鍵電子ピアノです。
スマートハイブリッドハンマーアクション鍵盤を採用し、グランドピアノと同様のタッチ感を実現。さらに、独自の音響システムで1鍵ごとに各弦の繊細な倍音の共鳴を調整し、美しく調和した和音の演奏も可能にしています。

卓上ピアノのためペダルは端子接続型になりますが、踏込み方の違いにも反応し、繊細なペダル表現ができるよう設計されているので、省スペースでも本格的に演奏を楽しみたい方にぴったりです。

おすすめの電子ピアノについてもっと知りたい方は下記記事を参考にしてくださいね。

76鍵盤のおすすめキーボード

CASIO ( カシオ ) / CT-S1-76WE

シンプルな操作性とコンパクトサイズにこだわったカシオの CT-S1-76。省スペースでも迫力ある低音を生み出す「水平型バスレフスピーカーシステム」を採用し、厳選された
61音色で多彩な表現が実現します。

本格的な仕様でありながら、重さ5.3kgで乾電池駆動も可能なため持ち運びも楽々。スピーカーも搭載されているので、弾き語りや音楽仲間との演奏にもおすすめです。

YAMAHA / piaggero NP-35B

鍵盤楽器初挑戦の方や、気軽にピアノを弾きたい方におすすめなのがpiaggeroです!

Piaggero(ピアジェーロ)は、「piano(ピアノ)」と「軽やかに」を意味する「leggero(レジェーロ)」を組み合わせた造語で、その名の通り軽量でコンパクトなため持ち運びに適しています。タッチの感触も重くなく、初心者向けの軽やかな弾き心地が特徴です。

Roland/  JUNO-DS76

JUNO-DSシリーズのコンセプトは「簡単!」「軽い!」「音がイイ!」の三拍子。コンセント不要の電池駆動のため気軽に持ち運びができ、「好きな場所で」「すぐに」演奏ができます。

仲間とのセッション、スタジオ練習、路上ライブなど、さまざまな場面で手軽に使えるキーボードなので、バンド活動や弾き語りを楽しみたいという方向けにおすすめです。

61鍵盤のおすすめキーボード

Roland / PIANO GO-61P

コンパクトで省スペースOKなGO:PIANOシリーズ。61鍵タイプは、3.9kgの軽量モデルで持ち運びも簡単。高品位なピアノ音色を採用している他、エレピやオルガンなど親しみやすい40音色を内蔵し、さまざまな音楽スタイルに対応しています。

Blueoothでスマホやタブレットとワイヤレス接続ができ、無料アプリ Piano Partner 2を接続すれば、内蔵曲の楽譜を表示したり、音あてゲーム、日々の練習記録もできます。弾きたいときに弾きたい場所で気軽に演奏できるのが最大の魅力と言えるでしょう。

KIKUTANI キーボード / KDP-61P

KDP-61Pは、老舗の楽器販売メーカーKIKUTANIが手掛ける折り畳み式キーボードです。
折り畳み時の大きさはなんと全長約47cm!バッテリー駆動なので、屋外で演奏するときも電源は必要ありません。

128の音色とリズムパターンが内蔵されており、ピアノ練習用楽器としても力を発揮します。価格も1〜2万円台のため、ピアノ初心者で安く購入したい方必見です。

TORTE / TSDK-61

とにかく安さで選ぶならTORTEのTSDK-61がおすすめです!1万円以下の安価で超軽量化したモデルでありながら、メトロノームや録音機能など初心者さんの練習をサポートする機能が搭載されています。

音質にそこまでこだわりがなく、急ぎで鍵盤楽器を用意しなければならない方や、まずは安いものでお試し購入を考えている方におすすめです。

鍵盤数を選ぶ時に注意したい『弾ける曲』と『弾けない曲』

ピアノを始める人の多くは「この曲が弾けるようになりたい!」と最初に目標を立てますよね。そのため、電子ピアノを選ぶ前に、目標曲を演奏するために必要な鍵盤数をチェックすることが大切です。

ここでは一例として、76鍵・61鍵では弾けない有名曲を挙げていきます。ポップスなどはアレンジにより使う音域が異なるため、クラシックの原曲で調べました。ぜひ目安にしてみてください。

76鍵盤では弾けない曲

76鍵キーボードの音域は、E1〜G7の6オクターブ+3鍵で、最低音が『ミ』、最高音は『ソ』になります。
以下に、76鍵で弾けない曲の一例をご紹介します!

ドビュッシー/グラドゥス・アド・パルナッスム博士

発表会やコンクールで選曲されることの多い、とても華やかな曲です。筆者のこれまでの経験上、だいたい小学校高学年~中学生くらいの生徒さんが弾かれます。最低音がC1音になるので88鍵のピアノでないと鍵盤が足りません。

ショパン/革命のエチュード

ショパンのとても有名な曲です。弾けたらかっこいいですよね。こちらも最低音がC1音になるので88鍵でないと不可能です。ピアノは、時代と共に鍵盤数が増えていったため、例に挙げたようなロマン派、近現代の曲は76鍵では弾けないことが多いので要注意です。

61鍵盤では弾けない曲

61鍵盤の音域は、C2~C7の5オクターブで、最低音が『ド』、最高音も『ド』になります。
以下に、61鍵では弾けない曲の一例をご紹介します!

ブルグミュラー/25の練習曲より「優美」

ピアノを習っている小学生の多くが通る道……ブルグミュラーの8番目の曲です。こちらは最高音がF7音になるので、61鍵盤では弾くことができません。また、ブルグミュラーに進んだくらいのレベルでペダルを使用することが増えるため、キーボードでは難しくなってきます。

エステン/人形の夢と目覚め

ピアノ発表会で良く演奏される人気曲です。「お風呂がわきました」の曲としても親しまれています。小学校低学年〜中学年のお子さんが演奏されることが多いです。こちらは最高音がE7音になるので61鍵では演奏できません。

例に挙げた曲は、小学生のお子さんが発表会やレッスンでよく弾かれる曲です。それ以上のレベルの曲を弾きたい方は、61鍵盤では足りないと考えてよいと思います。

電子ピアノ・鍵盤数に関するよくある質問

電子ピアノ・鍵盤数に関するよくある質問

ここでは皆さんのご質問やお悩みにお答えします!

Q.グランドピアノの鍵盤の数は?

一般的なグランドピアノの鍵盤数は88鍵盤です。

しかし、実はもっと鍵盤数が多いグランドピアノがこの世に存在しているのです。ベーゼンドルファーという会社が作ったピアノには、92鍵、97鍵のピアノがあり、演奏者が混乱しないように、白鍵が黒く塗りつぶされている部分があります。

Q.保育士におすすめの電子ピアノの鍵盤数は?

結論からいうと76鍵、または61鍵のもので十分足りるでしょう。

保育士さんがピアノを弾くのは主に童謡の伴奏や弾き歌いです。歌声は出せる音域に限りがあるので、そこまで広い音域は必要ありません。しかし、実際に使うピアノが88鍵の場合、鍵盤の場所が一致しづらくなりやすいので、88鍵のピアノならどの高さの鍵盤を弾けば良いのか常に考えながら練習する必要があります。

88鍵盤の卓上電子ピアノを探している。おすすめは?

筆者としては、先ほどご紹介したCASIOのPX-S5000がおすすめです。

卓上の電子ピアノだと、コンパクトになる分より精密な技術が必要になります。もともとCASIO社は計算機や時計の製造がメインの会社なので、その技術を応用してシンプルでありながら音響にもこだわった商品を多く開発しています。

電子ピアノとキーボードはどう違う?

電子ピアノとキーボードでは、鍵盤の数だけではなく鍵盤タッチの感触が大きく違います。

アコースティック・ピアノは、ハンマーが弦を叩くことで音が鳴ります。電子ピアノは、そのタッチと音質を限りなく再現しているため、弾いた時にしっかり鍵盤の重みを感じることができます。

対してキーボードは、タッチ感や音色の強弱といったアコースティックピアノの特徴を再現するよりも、軽量化やコンパクトサイズを優先したモデルがほとんどです。そのため、弾いたときの感覚が全然違うので、キーボードでは弾けるけどピアノになったら弾けない……というパターンも少なくありません。

ピアノ教室で88鍵のピアノの購入をおすすめされることが多いのは、こうした理由があるからなのです。

まとめ

これからピアノを習い始める方におすすめなのは、やはり88鍵の電子ピアノです。いずれ……とするよりも、最初から88鍵のものを購入した方が、結果的に費用も手間も省けると思います。

お試し用に購入する場合や、バンド活動をしていて持ち運び頻度が高い方は、76鍵や61鍵のキーボードがよいでしょう。その場合、曲やアレンジによっては足りない鍵盤が出てくる可能性があるので、事前に鍵盤数のチェックを忘れずに!

本記事があなたのピアノライフをより充実したものにするきっかけとなれば幸いです。