ピアノの楽譜で目にする音楽記号の中には、「なみなみ」や「三本線」など、弾き方の分からない記号もたくさんありますよね。

この記事では、ピアノの楽譜に出てくる音楽記号を一覧表にまとめて、読み方や意味・演奏方法を解説します。

音楽記号は作曲家が思う「理想の演奏」のヒントのようなもので、記号の意味を理解すれば、今よりもっと感情豊かな演奏ができるようになれます!
楽譜に知らない記号が出てきたら、読み方や意味を調べてから練習するのがおすすめです。

ピアノ楽譜の記号を知りたい人・ピアノを上手くなりたい人はぜひ最後までお読みください!

案内人

  • 笹木さき4歳からピアノを習い始め、中学・高校では吹奏楽部でトランペットとトロンボーンを担当。音楽大学短期大学部で作曲とジャズピアノを専攻し、音楽理論や演奏技術を学ぶ。クラシック、ジャズ、吹奏楽、映画音楽、ゲーム音楽と、幅広いジャンルで豊かな知識と経験を元に、音楽に関する執筆を中心に行っている。

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音部記号

記号

読み方

意味

ト音記号

高音域を表す

ハ音記号

中音部を表す

へ音記号

低音部を表す

ハ音記号はヴィオラやトロンボーンなどの中音域の楽譜に使われる記号で、ピアノの楽譜に使われることはほとんどありません。

ピアノの楽譜は基本的にト音記号とヘ音記号の組み合わせで出来ているので、この2つの音部記号の読み方をマスターすれば、簡単に楽譜が読めるようになります!

音階の読み方|ト音記号・ヘ音記号

「ト音記号」と「へ音記号」は、書き方と名前に音階の読み方のヒントがあります。

音階の読み方|ト音記号・ヘ音記号

それぞれの音部記号を手書きするとき、ト音記号はうずまきの中心から、ヘ音記号は左端の大きい黒丸から書き始めます。
ト音記号はうずまきの中心を通る線上の音符がト音(=ソ)、ヘ音記号は大きい黒丸を通る線上の音符がへ音(=ファ)です。

音階を読むときはこの線を基準にして、慣れるまでは丁寧に数えながら読みましょう。

楽譜を読むことが得意になれば、短時間で譜読みを済ませてピアノの練習を効率的に進めることができます!

楽譜の読み方についてもっと詳しく知りたい方は「【初心者向け】わかりやすい楽譜の読み方とコツ」を読んでくださいね。

変化記号

記号

読み方

意味

シャープ

半音高く

ダブルシャープ

シャープからさらに半音高く

フラット

半音低く

ダブルフラット

フラットからさらに半音低く

ナチュラル

上記の変化記号を無効にして元の音に戻す

ダブルフラットは♭2つで分かりやすいですが、ダブルシャープは「x」のような形から「♯」を連想しづらく、意味を覚えにくい記号の一つです。

同じ小節の中に変化記号がたくさん出てくる場合もあるので、どの記号がどの音符についているのか、譜読みの段階でしっかりと確認して間違えないように注意しましょう!

「臨時記号」と「調号」の違い

「臨時記号」は、曲の途中で音の高さを一時的に変化させる変化記号のことで、同じ小節の同じ高さの音符すべてに影響します。これはナチュラルなど他の臨時記号に上書きされない限り有効です。

「調号」は、ト音記号やヘ音記号のすぐ右隣にまとまってついているシャープやフラットのことです。調号はその都度臨時記号をつけるのを省くためのもので、調号によってその曲の調性が決定します。

調号

長調

短調

ハ長調
C dur/C major

イ短調
a moll/A minor

ト長調
G dur/G major

ホ短調
e moll/E minor

ニ長調
D dur/D major

ロ短調
h moll/B minor

イ長調
A dur/A major

嬰ヘ短調
fis moll/F# minor

ホ長調
E dur/E major

嬰ハ短調
cis moll/C# minor

ロ長調
H dur/B major

嬰ト短調
gis moll/G# mionr

嬰へ長調
Fis dur/F♯ major

嬰ニ短調
dis moll/D# minor

嬰ハ長調
Cis dur/C♯ major

嬰イ短調
ais moll/ A# minor

ヘ長調
F dur/F major

ニ短調
d moll/D minor

変ロ長調
B dur/B♭major

ト短調
g moll/G minor

変ホ長調
Es dur/E♭major

ハ短調
c moll/C minor

変イ長調
As dur/A♭major

ヘ短調
f moll/F minor

変ニ長調
Des dur/D♭major

変ロ短調
b moll/B♭minor

変ト長調
Ges dur/G♭major

変ホ短調
es moll/E♭minor

変ハ長調
Ces dur/C♭major

変イ短調
as moll/A♭minor

拍子記号

拍子記号とは音部記号の隣にある数字のことで、下から上に向かって「〇分の〇拍子」と読みます。

拍子は曲の最初で必ず提示されるもので基本的には数字で書かれていますが、ある特定の拍子のときに「c」などの省略記号が使われる場合があります。

拍子の省略記号

「c」のような形は4分の4拍子を表す省略記号で、コモン・タイムといいます。
「c」の中央に縦線の入った記号は2分の2拍子を表す省略記号で、カット・タイム(あるいはアッラ・ブレヴェ)といいます。

どちらもピアノの楽譜によく使われるので、ぜひ覚えてくださいね。

反復記号

記号

読み方

意味

リピート

記号で囲まれた小節を2回演奏する。(3回以上繰り返す場合は「x3」や「3 times」など、繰り返す回数が追加で表記される。)

また、曲の頭に戻る場合は開始位置の記号を省略する場合がある。

1番カッコ

 

繰り返しの1回目に演奏する

2番カッコ

反復記号によって繰り返したとき、2回目に演奏する

ダ・カーポ

曲の先頭に戻る。略さず『Da Capo』と表記されることもある

セーニョ

D.S.(ダルセーニョ)記号から、この記号のところに戻る

ダル・セーニョ

セーニョ記号に戻って繰り返す。略さず『Dal Segno』と表記されることもある

フィーネ

演奏終了を表す。

ダ・カーポ またはダル・セーニョで反復しているとき、この記号があったらそこで曲が終わる

コーダ


ダ・カーポ、ダル・セーニョで戻った後に、コーダ記号からもう1つのコーダ記号にジャンプし、そこから演奏する

コーダ記号は、正確にはヴィーデ記号と呼びますが、現在はコーダ記号で通じることが多く一般的な呼び方となっています。
実際の楽譜では『to+コーダ記号』『Coda+コーダ記号』のように表記されることも多いです。

反復記号を使った楽譜の演奏順序

反復記号は、単独ではなく複数の種類を組み合わせて出てくる場合も多いです。
ここでは具体例を挙げて、反復記号を使った楽譜の演奏順序を解説します!

この楽譜の場合はDのリピート記号で先頭へ戻り、途中でコーダへ飛ぶため、演奏順序はA → B → C → D → A → B → E → F となります。

この楽譜の場合はダル・セーニョでセーニョ記号に戻り、フィーネで終わるため、演奏順序はA → B → C → D → E → F → B → C → D となります。

反復記号は他にもさまざまな組み合わせで出てくるので、お手元の楽譜に反復記号が書いてあれば、ぜひ演奏順序を確認してみてください。
たくさん曲を弾いて何度も意味を確認しているうちに自然と覚えられるはずです!

以下の記事では、初心者の練習におすすめのピアノ曲を紹介しています。
ピアノ初心者におすすめ!簡単な練習曲ポップス・クラシック10選

強弱記号

記号

読み方

意味

ピアニッシシモ

極めて弱く

ピアニッシモ

とても弱く

ピアノ

弱く

メゾピアノ

やや弱く

メゾフォルテ

やや強く

フォルテ

強く

フォルテッシモ

とても強く

フォルティッシシモ

極めて強く

フォルテピアノ

大きく、そしてすぐに弱く

フォルツァンド

その音を強く


スフォルツァンド

その音を突然強く


リンフォルツァンド

その部分(フレーズ)を強調して

cresc.

クレッシェンド

だんだん強く

decr.
decresc.

デクレッシェンド

だんだん弱く

dim.

ディミヌエンド

だんだん弱く

強弱記号は種類が多く、見た目が似ている記号もあるので、演奏するときはきちんと意味を確認することが大切です。

スフォルツァンド(sf、sfz)はフォルツァンド(fz)をさらに強調したものですが、リンフォルツァンド(rf、rfz)は強調して演奏する範囲がフレーズである点が異なります。

デクレッシェンドとディミヌエンドはほぼ同じ意味ですが、厳密にはディミヌエンドのほうが「ギリギリまで小さく」「消え入るような」というニュアンスを持っています。
作曲家によって記号の使い分け方や演奏イメージが異なるので、どちらも「だんだん弱く」で覚えておいて、曲の解釈に合わせて演奏を調整するとよいでしょう。

強弱記号を弾き分けるポイント

楽譜に強弱記号が書かれているとき、単純に音量を変えて弾けばよいというわけではありません。

上手に弾き分けるポイントは、楽譜に出てくる強弱記号をひととおりチェックして全体の雰囲気をつかむこと。

たとえばフォルテッシモ(ff)であっても、メロディと伴奏部が全く同じ音量では音楽として不自然になってしまいます。
他にも、上行形(音の高さが上がっていく)ならクレッシェンド(<)・下行形ならデクレッシェンド(>)を少し意識したほうが、ずっと同じ調子で弾くよりも表現豊かに聞こえます。

強弱記号を弾き分けるときは、右手と左手のバランスやフレーズの流れを意識して弾きましょう!

速度記号

演奏の速さを示す速度記号には、数字でテンポを示す「メトロノーム記号」と、言葉による「速度標語」があります。
クラシックでは速度標語、それ以外のジャンルではメトロノーム記号が使われる場合が多いです。

表記

意味

目安のテンポ

Lento

ゆるやかに

♩=50~56

Adagio

静かにゆっくりと

♩=56~63

Andante

歩くような速さで

♩=63~76

Moderato

中くらいの速さで

♩=76~96

Allegretto

やや速く

♩=96~120

Allegro

速く

♩=120~152

Vivace

快速に

♩=152~176

曲の途中で変化する速さを示す記号も楽譜によく出てくるので、覚えておくと便利です。

記号

読み方

意味

ritardando(rit.)

リタルダンド

だんだん遅く

rallentando(rall.)

ラレンタンド

だんだん遅く

ritenuto

リテヌート

急に遅く

meno mosso

メノ・モッソ

今までより遅く

accelerando(accel.)

アッチェレランド

だんだん速く

piu mosso

ピウ・モッソ

今までより速く

a tempo

ア・テンポ

元の速さで

Tempo Primo(Tempo I)

テンポプリモ

最初(曲の冒頭)の速さで

アーティキュレーション記号

記号

読み方

意味

           

アクセント

その音を強く

テヌート

その音の長さを十分に伸ばす

スラ―

なめらかに

タイ

隣り合った同じ高さの音をつなげて

スタッカート

その音を短く切る

メゾ・スタッカート

音を短めに切って(スタッカートよりも長く)

フェルマータ

その音を2倍程度に伸ばして演奏する

アクセント記号には横向きで「>」と表記するものと、縦向きで「^」「v」と表記するものがあります。横向きのアクセントよりも縦向きのアクセントの方がより強いニュアンスで演奏されます。

装飾音記号

記号

読み方

意味

前打音

斜線あり▶短前打音
手前の小さな音符を短く弾き、続けて大きな音符を弾く

斜線なし▶長前打音
手前の小さな音符を大きな音符の1/2程度の長さで弾き、続けて大きな音符を弾く

トリル

その音と2度上の音とを早く繰り返し弾く

プラルトリラー

その音から2度上の音を弾きすぐに元の音に戻る

モルデント

その音から2度下の音を弾きすぐに元の音に戻る

ターン

記号のつけられた音を中心にして2度上の音と2度下の音を使って弾く

トレモロ

1つの音を素早く繰り返して演奏したり、2つの音を交互に素早く繰り返して弾く

グリッサンド

区切らず流れるように弾く

アルペジオ記号

和音(コード)の構成音を、下から1音ずつタイミングをずらして弾く

※下向きの矢印が付く場合は、上から1音ずつタイミングをずらして弾く

前打音はピアノの楽譜でよく見る装飾音記号の1つです。
他にも小さな音符(装飾音)が複数つく「複前打音」、音符の後ろにつく「後打音」などのバリエーションがあります。

装飾音の長さや続く音符を弾くタイミングにはっきりとした決まりはなく、作曲された時代や作曲者によっても異なる点に注意しましょう。

楽譜でよく見る装飾音の弾き方|トリル・ターン・アルペジオ

●トリル

<弾き方の一例>

トリル記号は、「tr」に続く波線(あるいはギザギザした線)の長さいっぱいまで音を交互に、なるべく速いスピードで繰り返し弾きます。
上の音からスタートする弾き方もありますが、どちらにしてもトリル部分は必ず記号のついた音で終わります。

●ターン

<弾き方の一例>

ターン記号と間違いやすい記号に、「s」を左に倒した形の「転回ターン記号」があります。

転回ターンはターンと音列が逆になるため、上の譜例と同じ音(ド)に転回ターン記号が付いた場合は「ドー シ ド レ ド・・・」と弾きます。

●アルペジオ

<弾き方の一例>

アルペジオ記号がついた和音は、タイミングをずらして一音ずつ弾きます。
弾いた音は鍵盤を押さえたままで、続く音をなめらかに弾きましょう。
テンポがゆっくりの曲ではゆっくりと、速い曲では素速く弾いて和音を完成させます。

ここで紹介した弾き方はあくまで一例で、装飾記号の弾き方は作曲家や時代によって異なります。

発想記号

記号

読み方

意味

agitato

アジタート

激しく

amabile

アマービレ

愛らしく

appassionato

アパッシオナート

熱情的に

brillante

ブリッランテ

華やかに

cantabile

カンタービレ

歌うように

capriccioso

カプリチョーソ

気まぐれに

con brio

コンブリオ

活気をもって

con fuoco

コンフオーコ

火のように、生き生きと

con moto

コンモート

動きを付けて

dolce

ドルチェ

甘美に

espressivo
espress.
espr.

エスプレッシーヴォ

表情豊かに

giocoso

ジョコーソ

楽しげに

grandioso

グランディオーソ

壮大に

geave

グラーベ

重々しく

grazioso

グラツィオーソ

優美に

legato

レガート

滑らかに

leggero
leggiero
legg.

レジェロ

軽く

maestoso

マエストーソ

荘重に

marcato
marc.

マルカート

はっきりと

pastorale

パストラーレ

牧歌風に、のどかに

scherzando

スケルツァンド

たわむれるように、軽快に

sostenuto
sosten.

ソステヌート

音を保持して

spiritoso

スピリトーゾ

精神を込めて

tranquillo

トランクイロ

静かに、落ち着いて

発想記号は、演奏法というよりはやや抽象的に作曲者の意図や演奏時の心づもりや考え方を示すもので、主にクラシックの楽譜に使われます。
発想記号の「maestoso」は、アンダンテからモデラート程度の速さを指示する速度記号として使われる場合もあります。

その他の記号

記号

読み方

意味


8va alta
ottava alta

オッターヴァ・アルタ

1オクターブ上で弾く


8va bassa
ottava bassa

オッターヴァ・バッサ

1オクターブ下で弾く



ペダル記号

ぺダルを踏む・上げる

L.H.

レフトハンド

左手で弾く

R.H.

ライトハンド

右手で弾く

グランドピアノにはダンパーペダル、ソステヌートペダル、シフトペダル(ソフトペダル)という3種類のペダルがあるのが一般的です。
上の表で紹介したペダル記号は、ピアノの楽譜に最もよく出てくるダンパーペダルの使用を指示する記号です。

ピアノのペダルの役割や使い方についてもっと詳しく知りたい人は「【簡単】ピアノのペダルの役割解説 それぞれの違いやテクニックについて」を読んでくださいね。

1冊あると便利!音楽記号辞典のおすすめ3選

新しい曲にチャレンジすると、珍しい記号や知らない音楽用語を見かけることがよくあります。
練習中に意味を知りたい記号を見つけたらすぐ調べられるように、お気に入りの音楽記号辞典を1冊持っておくと便利です。

独学の人は図解があって解説が読みやすいもの、レッスンに通う人は持ち歩きに便利なハンディ版など、目的に合う辞典を選びましょう!

いちばん親切な音楽記号用語事典

「いちばん親切な音楽記号用語事典」は、作曲家・轟千尋の解説で音楽記号や音楽用語の読み方をわかりやすくまとめた事典です。

記号に込められた作曲家の思いを知ることで、ピアノの演奏はもちろん、音楽鑑賞ももっと楽しむことができるようになります。

イラストや図がたくさん載っていて、ピアノ初心者にもやさしいおすすめの事典です。

ありそうでなかった 形から引ける音楽記号辞典 ジュニア版

「ありそうでなかった 形から引ける音楽記号辞典」は、名前がわからなくても記号・マークの形から意味を探せる便利な辞典です。
音楽の基本的な記号・用語を約200語収録していて、子どもから大人まで、音楽を学ぶ幅広い世代の人に役立つ内容になっています。

一般的な辞典と同じように読み方から探せる索引もあるので、音楽辞典を持っていない人が初めて購入するのにぴったりの一冊です。

この1冊で楽譜が読める!音楽記号事典

「この1冊で楽譜が読める!音楽記号事典」は、楽譜のしくみやリズム・拍子の取り方など、音楽の基礎知識が詰まった事典です。

ハンディサイズですが楽譜や文字の読みやすさは抜群で、レッスンに通う人の持ち歩き用にも最適。

音楽記号の形と読み方から探せる目次・索引があって実用性抜群です。

まとめ

今回は、ピアノの楽譜でよく見る音楽記号をまとめて紹介しました!

初めて見る記号や意味を思い出せない記号を見つけたら、記号の一覧表や辞典・教本などの解説を確認しましょう。
記号や楽譜のルールなど、ピアノを基礎から学べるおすすめの教本は以下の記事で紹介しています。
【本当に役立つ】ピアノ教本の選び方!初心者の基礎練習におすすめ

音楽記号を覚えるには、調べた内容を忘れないように楽譜に書き込んでおくのも効果的です!
楽譜の理解を深めて、今よりもっとピアノの演奏を楽しんでくださいね。