今回は、課題曲Ⅰ~Ⅴの5曲について演奏のポイント解説や参考にしたい動画をご紹介します。ぜひ音源を聴きながら読んでみてください。


 

吹奏楽コンクール2021 課題曲Ⅰ「トイズ・パレード」(作曲:平山雄一)

 
曲名からも想像できるように、まるでおもちゃが楽しく歌いながら行進しているようなマーチ曲です。
 
元気いっぱいの中高生の皆さんにもぴったりの明るい曲ではないでしょうか。
 
4/4拍子の曲ですが、マーチには珍しく、曲中には大きなテンポの変化があります。テンポ120から40まで下がり、その後accelをかけながら元のテンポに戻すよう指示がありますが、勢いに任せて曲の最後までaccelをし続けないことがポイントです。
 
曲はクラリネットパートの柔らかなメロディーに始まり、低音セクションの刻みに乗せてフルートの合いの手やトランペットのサブメロディーにつながります。
 
曲の中盤にあるユーフォニアムやサックスの優雅なメロディーも聴かせどころ。全員で息を合わせる部分と各パートが歌う部分など、メリハリをつけて演奏しましょう。
 
どのパートにもメロディーやサブメロディー、合いの手など重要な役割があるので、曲の中で自分は何をする役なのかを考えることも大切です。
 
メロディーの合間に入る細かい音符や響きも大切にしながら、おもちゃ達の明るく楽しいマーチを表現してみてくださいね。

吹奏楽コンクール2021 課題曲Ⅱ「龍潭譚」(作曲:佐藤信人)

 
龍潭譚(りゅうたんだん)とは、明治~昭和初期にかけて活躍した小説家である泉鏡花が明治29年に発表した小説のタイトルです。
 
小説は、ツツジの花が一面に咲く野道をひとりの子どもが歩いているうちに、羽虫が舞う不思議な空間に辿り着く幻想的なシーンから始まります。
 
課題曲Ⅱ「龍潭譚」も、この小説と同じくどこか幻想的で日本らしい響きが特徴です。
 
雅楽で活躍する篳篥(ひちりき)のように、和の響きに欠かすことのできない笛をフルートやピッコロの音色で表現しています。
 
1曲を通してソロが目立つピッコロをはじめ、フルートやオーボエ、アルトサックス、バリトンサックス、ホルンなどソロパートが多いのが印象的です。
 
また、ソロ表記はないものの、打楽器パートも曲の要所において重要な役割を果たしています。
 
全体を通してピアニッシモで演奏する場面が多く、吹奏楽の柔らかさやダイナミクスを活かしつつも、繊細で緊張感を保ちながら演奏するのがポイントです。
 
また、曲中に度々見られる休止符は単なる休みと捉えず、「余韻」など音楽の一部として表現することが求められます。
 
間の取り方や曲の解釈などの音楽性にも注目しながら丁寧に取り組んでいくとよいですね。

吹奏楽コンクール2021 課題曲Ⅲ「僕らのインベンション」(作曲:宮川彬良)

 
有名テーマパークや有名アーティストなど数々の音楽を手掛け、テレビでも活躍している宮川彬良さんによる委託作品です。
 
吹奏楽コンクールの課題曲には、毎年吹奏楽連盟が課題曲のために作曲してほしいと依頼してできた「委託作品」が含まれていて、音楽的・技術的に精度が高いことで知られています。
 
この曲を演奏する際に気を付けたいのが、曲名にもある「インベンション」です。
 
インベンションとは、2つの旋律がカノンのように追いかけあいながら進む音楽のことで、バッハのインベンションなどで聴いたことのある人もいるかもしれませんね。
 
また、宮川彬良さんがスコアに記した解説には「導音」「主音」「解決」など音楽理論の言葉も使われています。難しい言葉ですが、音楽理論や和声の知識を身に付けておくと曲の構成を理解する時にとても役立ちます。
 
曲中では合計9回にわたりテンポの変化が訪れます。テンポの変化に合わせて曲の調も変わるため、雰囲気をガラッと変えられるよう息の合った演奏が求められます。
 
拍子も2/4に始まり、6/8、3/4、3/8、5/8など目まぐるしく変化していくため、変拍子の曲に慣れていない人にとっては難しく感じるかもしれませんが、根気強く丁寧にリズムを取っていきましょう。

吹奏楽コンクール2021 課題曲Ⅳ吹奏楽のための「エール・マーチ」(作曲:宮下秀樹)

 
課題曲Ⅰに続き、マーチ曲です。タイトルにもあるように、この曲は「エール=応援」がテーマとなっています。
 
作曲者の宮下秀樹さんは現役の中学教諭でありながら吹奏楽部の顧問も務めており、日頃から生徒同士のさまざまな「エール」に触れてインスピレーションを受けて作曲したと想像します。
 
曲の構成はシンプルなマーチで、課題曲の中でも技術面での難易度は比較的低めですが、その分、他校と差を付けて「聴かせる」演奏として完成させるのは難しいかもしれません。
 
単純な音符ほど音の出し方や音色など基礎力が伝わるため、楽譜がシンプルだからと言って油断せず、日頃の基礎練習からしっかりと行うことが大切です。
 
課題曲Ⅰのマーチに比べると、テンポも安定していてよりマーチらしさが引き立っています。
 
曲のテンポ感を握るのはスネアドラムやシンバルなどの打楽器パート。まとまりのある演奏を目指すためにも、打楽器パートの安定したリズム感は欠かせません。
 
また、木管パートには細かい動きも多く見られます。3連符や付点音符などの細かいニュアンスの違いを出せるように丁寧なに練習していきましょう。

吹奏楽コンクール2021 課題曲Ⅴ「吹奏楽のための「幻想曲」-アルノルト・シェーンベルク讃」(作曲:尾形凛斗)

 
毎年難易度の高い曲として話題に上る課題曲Ⅴですが、2020年度も特殊技法がたくさん散りばめられた難しい曲となっています。
 
技術面だけでなく音楽表現としての難易度も高いため、課題曲Ⅴを選ぶ学校は多くはないでしょう。
 
難易度の高い理由としては、前述したように曲中で使用されるさまざまな特殊技法にあります。
 
例えば、金管楽器が楽器を鳴らさずにピストンをカチャカチャと動かす音を出したり、マウスピースを逆さまに使用して息を吹き込みシューッと音を立てたり、演奏者が大きく口を開けてため息をついたりと、他の曲ではあまり見られないテクニックが使われています。
 
学生の皆さんには慣れない奏法かもしれませんが、幻想的な雰囲気を出すには効果的ですね。
 
ただ音符を追って楽譜通りに演奏するのではなく、繊細な前半部分と重厚な後半部分を対比させながら自分たちの音楽的解釈を取り入れ、表現することを意識してみてください。

吹奏楽コンクール2020 課題曲のまとめ

今回は2021年度の吹奏楽コンクール課題曲について、演奏時のポイントや参考動画をご紹介しました。どの課題曲も聴きごたえたっぷりの名曲揃いです。それぞれの部活の良さを最大限に活かしながら、夏のコンクールに向けて自分たちの音楽を作り上げてくださいね。