引越しの際、ピアノは他の家具と一緒に運べないことをご存知でしょうか?ピアノは大きくて重いだけでなく、温度や湿度の影響を受けやすいため、専門業者への依頼が必要です。
今回はピアノの引越しについて、気になる費用や作業の手順、注意点などを解説します。
案内人
- おばたおりえピアノ調律師。大阪府出身。
大学卒業後、専門学校にて調律・修理・整調・塗装・オーバーホールを学ぶ。
卒業後、ピアノ調律会社にて工房勤務経験を経て現在フリーの調律師として活動中。
目次
ピアノの引越しには専門業者による運送が必要
ピアノは他の家具と違い、通常の引越しプランで運んでもらうことはできません。
理由の一つは、ピアノが重量物だから。
ピアノはアップライトで約250kg、グランドで約370kgほどあり、自分たちで持ち上げるのはまず不可能です。
一般的に100kg以上の荷物は重量物扱いとなるため、一般の引越し作業では対応できません。引越し業者で引き受けている場合も、実際には重量物専門の業者に委託しています。
自分で運ぶのはおすすめしない
2つめの理由として、ピアノのデリケートさが挙げられます。温度変化や湿度により状態が変わったり、運搬時の衝撃で部品に不具合が出たりするケースは珍しくありません。
重量だけなら知人を集めればどうにかなるかもしれませんが、上記の点により素人が動かすのはおすすめできないのです。ピアノを壊してしまったり、床や壁を傷つけてしまったり、最悪の場合、大きな事故につながる可能性もあります。
こうしたリスクを抱えるより、信頼できるプロに依頼して安全に引越しをするのがおすすめです。
電子ピアノは引越し業者の通常プランでOK
専門業者を利用すべきなのはアップライトピアノやグランドピアノであり、電子ピアノは引越しの通常プランでほぼ問題ありません。
電子ピアノの重さは平均で40kg〜80kg程度。タンスなどの一般的な大型家具とさほど変わらないため、たいていの引越し業者は対応してくれます。
ピアノの引越しの流れ
ピアノ引越しの流れは以下の通り。
①見積もり依頼
↓
②契約・移動日を決める
↓
③梱包・搬出
↓
④搬入・設置
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①業者に問い合わせ、見積りを依頼する
まずは専門業者に問い合わせ、見積りを依頼しましょう。見積りには以下のような情報が必要になります。
<ピアノの情報>
- アップライトピアノ or グランドピアノ
- メーカー
- 機種(大きさや重さをはかるため)
<現在の住居と転居先の情報>
- 一軒家 or マンション
- 階数
- 玄関までの段差の有無と段数
- エレベーターの有無と大きさ(何人乗りか)
- 入り口や廊下の幅
- 引越し先の部屋のドアの大きさ
- 家の前の道路の幅
etc.
クレーン車を使って2階の窓から搬入する場合、入り口が狭いためにピアノを分解する場合などには特殊作業料金が発生します。
見積りに関しては、電話やメールでおおよその金額を出してもらえますが、ケースによっては作業員が訪問の上で算出することもあります。
②移動日を決める
見積り内容に問題がなければ移動日を決めて契約します。
引越しシーズンの3〜4月は繁忙期のため、業者のスケジュールが埋まっているかもしれません。ですので、第3希望日くらいまで考えておくとよいでしょう。
また、配車の都合上、当日の時間指定はできないのが一般的です。ご注意ください。
③運送当日~梱包と搬送~
運送当日には、ピアノ周りや通り道を事前に片付けておきましょう。
ピアノの梱包は作業員が行います。梱包前に写真を撮っておくと、万が一傷が付いたりした際に安心です。
④転居先への搬入と設置
業者が転居先に着くと、壁や床の養生を行い、ピアノを運び入れます。
ピアノは一度設置すると移動させられないため、下にカーペットを敷く予定などがあれば、事前の用意を済ませておきましょう。
搬入が終わったら動作と傷の確認をして、作業完了です。
ピアノ引越しの費用・料金相場
ピアノの引越し費用は
基本運送料金+特殊作業料金
で決まります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
基本運送料金
基本の運送料金は、ピアノの種類と運送距離に応じて変わります。
以下はおおよその相場です。
アップライトピアノの運送料金
10kmまで |
1,500〜20,000円 |
50~79km |
30,000円 |
100~120km |
40,000〜50,000円 |
グランドピアノの運送料金
10kmまで |
30,000円 |
50~79km |
50,000円 |
100~120km |
70,000円 |
特殊作業料金
搬出方法や搬入経路によっては特殊作業が発生します。以下がおおよその相場です。
階段(1階ごと) |
5,000~10,000円 |
外階段(10段ごと) |
5,000~8,000円 |
クレーン車の利用 |
10,000~50,000円 |
手吊り搬出 |
30,000円~ |
ピアノの解体、分解 |
25,000円~ |
ピアノ引越しの注意点
ここからは、ピアノ引越しの注意点を3つ紹介します。
複数の業者に見積もりを依頼すること
ピアノ引越しも通常の引越しと同じで業者によって料金が変わるため、複数の業者に見積もりを依頼するのがおすすめです。
ポイントは、料金の安さだけでなく信頼できる業者かどうか。対応の親切さや作業内容だけでなく、運送時の傷や故障に対して保障があるかも確認しましょう。ピアノ運搬が引越し業者のオプションになる場合も、専門業者と相見積もりするのをおすすめします。
搬出・搬入経路の情報は正確に伝える
ピアノ引越しの見積もりはほとんどの場合、電話やメール、Webフォームで完結します。その際に重要なのが、搬出・搬入経路の情報を正確に伝えることです。
例えば2階に設置しているのに誤って1階と伝えていた、ということがあれば、クレーン車が必要になり当日の搬出ができません。このようなトラブルが起きないよう、必要な情報は間違いがないよう詳細に伝えましょう。
引越し完了後の調律について
ピアノを移動させた後には調律が必要です。移動の衝撃や環境の変化で状態が変わり、音が狂ったり部品に不具合が出たりするケースがあるためです。
引越し後の調律は、基本的に運搬当日ではなく別の日に行います。ピアノが引越し先の室温や湿度に馴染み、調律に狂いが出てくるまでに時間が掛かるからです。設置完了後1週間以上空けてから調律を依頼するのがおすすめです。
下記記事では、ピアノ調律の作業の流れや費用について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
まとめ
今回はピアノの引越しについて、依頼の流れや注意点などを解説しました。
重要な点をまとめておきますね。
- ピアノの引越しは専門業者への依頼が必要(電子ピアノは通常の荷物扱い)
- 料金はピアノの大きさ、重さ、移動距離などで変わる
- 搬出や搬入の状況により特殊作業料金が発生する
- 見積もりは複数の業者に依頼する
引越しはピアノにとって負担の大きな作業です。出費が増えるとしても、安心して任せられる業者を選びましょう。